結論
- 回収年数は「自己負担 ÷ 1年に得する額」で計算します
- 下の前提では、補助金なしで約29年、東京都の補助ありで約8年です
- 費用と使い方で大きく変わり、停電への備えの価値は金額に入りません
回収年数の分子になる自己負担は、設置費用で決まります。自分の家の数字を入れるために、まず実際の費用を確かめておくと計算が具体的になります。
蓄電池の元が取れるかどうかは、計算の式そのものは単純です。払った額を、1年に得する額で割るだけです。難しいのは、式に入れる数字が家ごとに違うことです。
このページでは、数字の出どころを示したうえで、一つの例を計算します。そのうえで、どの数字が変わると回収年数がどれだけ動くかを、表で示します。寿命と劣化、停電への備えまで含めて、判断の材料をそろえます。
補助金の額は、地域と容量でほぼ決まります。一方で、実際に払う額は設置費用しだいで、業者や機種で変わります。自分の家の回収年数を出すには、最後は見積もりで費用を確かめる必要があります。
回収年数は、どう計算する?
回収年数は「自己負担 ÷ 1年に得する額」で計算します。1年に得する額は、ためた電気を自分で使うことで減る電気代です。
| 式に入る数字 | 意味 | どこで確かめる |
|---|---|---|
| 設置費用 | 機器と工事の合計 | 見積もり |
| 補助金 | 国・都道府県・区市町村の補助 | 地域の公式ページ |
| 1日に回せる電気 | 昼にためて夜に使う量 | 売電の明細 |
| 買う値段 | 電気を買う1kWhあたりの値段 | 電気料金の明細 |
| 売る値段 | 余った電気を売る値段 | 売電の明細 |
「買う値段 − 売る値段」が入るのは、ためた電気はもともと売れたはずの電気だからです。売る代わりに夜に使うと、夜に買う電気が減ります。その差が、蓄電池で得する分になります。
あなたがやること: 電気料金と売電の明細を、直近1年分そろえておきます。
補助金あり・なしで何年?
下の前提で計算すると、補助金なしで約29年、東京都の補助ありで約8年です。補助金は回収年数を大きく縮めます。
計算の前提
| 項目 | 値 | 出どころ |
|---|---|---|
| 容量 | 7kWh | このサイトの共通の前提 |
| 設置費用 | 96.25万円(税込) | 国の目標価格12.5万円/kWh(税抜)× 7kWh × 1.1 [1] |
| 補助金 | 70万円 | 東京都:7kWh × 10万円 [2] |
| 買う値段 | 31円/kWh | 電気料金の目安単価(税込)[3] |
| 売る値段 | 8.50円/kWh | 卒FIT後の買取単価の一例 [4] |
| 1日に回せる電気 | 4kWh | 仮定(編集部が置いた値) |
1年に得する額 = 4kWh × 365日 ×(31円 − 8.50円)= 約3.3万円
| 自己負担 | 1年に得する額 | 回収年数 | |
|---|---|---|---|
| 補助金なし | 96.25万円 | 約3.3万円 | 約29年 |
| 東京都の補助あり | 26.25万円 | 約3.3万円 | 約8年 |
| 都+足立区の補助あり | 21.25万円 | 約3.3万円 | 約6.5年 |
東京都の補助は「容量 × 10万円」と「税抜の対象経費(国や区の補助を引いた残り)」の小さい方です。[2] 足立区の蓄電池の補助は定額5万円です。[5] この例では税抜の経費が87.5万円あり、区の5万円を引いても都の70万円は満額です。
国の蓄電池の補助金(DR補助金)は、2026年5月29日に予算に達して受付を終え、SIIは再開の予定はないとしています。[6] そのため、この例の合計には入れていません。
あなたがやること: 住んでいる地域の補助金の額と、受付中かどうかを確かめます。
累積収支はどう動く?
東京都の補助がある例では、8年目あたりで累積の収支がプラスに変わります。補助金なしでは、20年たってもマイナスのままです。
前提: 7kWh・税込96.25万円、1日4kWhを自分で使う、買う電気31円・売る電気8.50円。年に約3.3万円浮く計算です。
| 経過年数 | 補助金なし | 東京都の補助あり | 都+足立区 |
|---|---|---|---|
| 0年 | −96.3万円 | −26.3万円 | −21.3万円 |
| 5年 | −79.8万円 | −9.8万円 | −4.8万円 |
| 10年 | −63.4万円 | +6.6万円 | +11.6万円 |
| 15年 | −47.0万円 | +23.0万円 | +28.0万円 |
| 20年 | −30.6万円 | +39.5万円 | +44.5万円 |
このグラフは、電気の値段が変わらず、劣化や故障もない場合の線です。実際の線は、次の節で示す条件で上下に動きます。
あなたがやること: グラフの線が0を越える年と、蓄電池を使う予定の年数をくらべます。
どの数字で年数が変わる?
回収年数を大きく動かすのは「設置費用」「1日に回せる電気」「買う値段と売る値段の差」の3つです。中でも設置費用は、見積もりしだいで大きく変わります。
1日に回せる電気を変えた場合
| 1日に回せる電気 | 1年に得する額 | 補助金なし | 東京都の補助あり |
|---|---|---|---|
| 2kWh | 約1.6万円 | 約59年 | 約16年 |
| 3kWh | 約2.5万円 | 約39年 | 約11年 |
| 4kWh | 約3.3万円 | 約29年 | 約8年 |
| 5kWh | 約4.1万円 | 約23年 | 約6年 |
| 6kWh | 約4.9万円 | 約20年 | 約5年 |
設置費用を変えた場合(東京都の補助あり)
| 見積もりの単価(税抜) | 設置費用(税込) | 自己負担 | 回収年数 |
|---|---|---|---|
| 12.5万円/kWh | 96.25万円 | 26.25万円 | 約8年 |
| 15万円/kWh | 115.5万円 | 45.5万円 | 約14年 |
| 20万円/kWh | 154万円 | 84万円 | 約26年 |
国の資料では、補助事業の家庭用蓄電池は工事費込みで1kWhあたり約12.1万円でした(2023年度)。[7] 補助事業以外では、工事費を除いて15〜20万円/kWhが標準的な水準とされています。[7] 表の15万円・20万円は、この幅をもとに編集部が置いた例です。
買う値段と売る値段を変えた場合(東京都の補助あり、4kWh)
| 条件 | 値段の差 | 回収年数 |
|---|---|---|
| 買う25円・売る8.50円 | 16.5円 | 約11年 |
| 買う31円・売る8.50円 | 22.5円 | 約8年 |
| 買う37円・売る8.50円 | 28.5円 | 約6年 |
| 買う31円・売る9.9円 | 21.1円 | 約8.5年 |
| 買う31円・売る24円 | 7円 | 約26年 |
買う値段の25円・37円は、編集部が置いた幅です。売る9.9円は2026年度の住宅用太陽光の買取価格です。[8] 24円は、2025年度10〜3月の欄に示された最初の4年間の価格です。[8] 売る値段が高いあいだは、ためて使うより売る方が得になりやすく、回収は大きく延びます。
売るのと自分で使うのと、どちらが得かは家ごとに違います。資源エネルギー庁も、一概には言えないと説明しています。[9]
見積もりの単価が1kWhあたり数万円違うだけで、回収年数は10年以上動きます。相場の範囲に入っているかを、複数社の見積もりで確かめておくと安心です。
あなたがやること: 自分の家の売る値段と、見積もりの単価(税抜、1kWhあたり)を表に当てはめます。
寿命と劣化を入れると?
回収年数が、蓄電池を使える年数より長いと、元は取れません。メーカーの保証年数と、容量の減り方をあわせて見ます。
あるメーカーのカタログでは、蓄電池ユニットの保証を15年としています。[10] 同じカタログの16.4kWhの機種の欄には、15年後に初期の60%以上の容量を保証すると書かれています。[10] 保証の内容は機種で違います。
| 条件 | 15年後の累積収支(都の補助あり) | 回収年数 |
|---|---|---|
| 劣化なし | +23.0万円 | 約8年 |
| 15年で容量が60%まで減る | +13.2万円 | 約9年 |
劣化ありの行は、容量が毎年同じ量ずつ減り、15年で60%になると編集部が仮定した計算です。得する額も容量と同じ割合で減るとしました。補助ありの約8年は、劣化を入れても保証の15年におさまります。補助なしの約29年は、保証の年数を大きく超えます。
太陽光のパワーコンディショナ(電気を家で使える形に変える機器)も、いずれ交換が要ります。国の資料では、住宅用太陽光のパワコンは20年で1回の交換が一般的で、相場は約42.3万円とされています。[11] 蓄電池と一体の機種もあるため、何を交換するのかを見積もりの段階で聞いておきます。
保証の年数と容量の保証は、機種ごと・業者ごとに書面で比べられます。見積もりをとるときに、保証の条件も並べてもらいましょう。
あなたがやること: 候補の機種の保証年数と、何年で何%の容量を保証するかを確かめます。
停電への備えは金額になる?
停電のときに電気が使える価値は、回収年数の計算には入れられません。それでも、蓄電池を選ぶ理由として大きいものです。
冷蔵庫・テレビ・照明・スマートフォンの充電なら、合計で300W前後という目安があります。[10] 同じカタログは、285Wの家電を9.8kWhの蓄電池で約29時間使える目安を示しています。[10] 保証値ではなく、使い方で変わります。
国の資料でも、災害への備え(BCP用途)として蓄電池をつける例が増えているとされています。[7] 回収年数が保証の年数に近い場合は、停電への備えをどれだけ重く見るかが判断の分かれ目になります。
あなたがやること: 停電のときに使いたい家電を3つ書き出し、必要な時間を決めます。
太陽光とセットなら何年?
太陽光と蓄電池を同時につける場合は、太陽光の分と蓄電池の分を足して考えます。下の例では、セットで約8.5年です。ただし、前提の多くは編集部の仮定です。
| 項目 | 太陽光(4kW) | 蓄電池(7kWh) |
|---|---|---|
| 設置費用 | 114.4万円(仮定) | 96.25万円 |
| 東京都の補助 | 48万円 [13] | 70万円 [2] |
| 自己負担 | 66.4万円 | 26.25万円 |
| 1年に得する額 | 約7.8万円 | 約3.1万円 |
太陽光の費用は、国の資料にある新築の2024年設置の平均28.6万円/kWを当てはめた仮定です。[11] 既築の平均値と税の扱いは、資料の本文で確認できていません。東京都の既存住宅向けの太陽光の補助は、3.75kWを超える分は1kWあたり12万円です。[13]
太陽光の発電量は、国の想定する設備利用率13.7%で計算しました(4kW × 8,760時間 × 13.7% = 約4,800kWh)。[11] 自分で使う割合は約30%としました。国の想定する余った電気を売る割合70%から、編集部が逆算した値です。[11]
太陽光の1年に得する額は、自分で使う約1,440kWh × 31円と、売る約3,360kWh × 9.9円の合計です。[3][8] 蓄電池の分は、FITの期間中なので売る値段を9.9円として計算しました(4kWh × 365日 × 21.1円)。
セットの回収年数 =(66.4万円 + 26.25万円)÷(7.8万円 + 3.1万円)= 約8.5年
FITの10年が終わると、売る値段が下がります。[8] 太陽光の分は得する額が減り、蓄電池の分は値段の差が広がって増えます。太陽光を新しくつける家では、蓄電池の効果はFITが終わったあとに大きくなります。
あなたがやること: 太陽光も検討するなら、太陽光と蓄電池を分けた見積もりをもらい、それぞれの回収年数を出します。
回収を早める余地はある?
回収を早める余地は、主に「容量の合わせ方」「補助金の重ね方」「費用の比べ方」の3つにあります。どれも契約の前に決めることです。
| 工夫 | 効く数字 | 確かめること |
|---|---|---|
| 容量を昼の余りに合わせる | 自己負担 | 1日に売っている量より大きくしすぎない |
| 都と区の補助を重ねる | 自己負担 | 区の補助の有無と、事前か事後かの申請時期 |
| 複数社の見積もりをくらべる | 自己負担 | 1kWhあたりの単価と、工事費の内訳 |
| 料金プランを見直す | 値段の差 | 夜の単価と昼の単価の違い |
容量を大きくすると、都の補助も増えますが、費用も増えます。昼に余る量より大きい容量は、ためる電気がないため、得する額は増えません。
都の補助は契約前の事前申込が必要です。[2] 区の補助は、区によって設置の前に申し込むか、後に申し込むかが違います。順番を誤ると補助を受けられないため、申し込みの順番は契約の前に確かめます。
あなたがやること: 自分の家で使えそうな工夫に印をつけ、見積もりのときに相談する項目にします。
自分の家で計算するには?
自分の家の回収年数は、5つの数字があれば計算できます。下の表の右の列を埋めてください。
| 項目 | 例 | わが家 |
|---|---|---|
| 買う値段(円/kWh) | 31 | 電気料金の明細から |
| 売る値段(円/kWh) | 8.50 | 売電の明細から |
| 1日に回せる電気(kWh) | 4 | 売電量 ÷ 日数を目安に |
| 補助金(万円) | 70 | 地域の公式ページから |
| 設置費用(万円) | 96.25 | 見積もりから |
1日に回せる電気は、昼に売っている量が上限の目安です。売電の明細で1か月に売った量を日数で割ります。蓄電池の容量より多くはためられません。
数字が埋まったら、次の順に計算します。
- 自己負担 = 設置費用 − 補助金
- 1年に得する額 = 1日に回せる電気 × 365 ×(買う値段 − 売る値段)÷ 10,000(万円)
- 回収年数 = 自己負担 ÷ 1年に得する額
表の中で、自分では決められない数字は設置費用だけです。見積もりの金額を入れると、わが家の回収年数が出ます。
あなたがやること: 表を埋めて計算し、保証の年数とくらべます。
次にやること
チェックが埋まらないのは、たいてい設置費用の欄です。補助金の申請に慣れた業者から、まとめて見積もりをとると比べやすくなります。
よくある質問
蓄電池は必要ですか?
家によって違います。売る値段が安く、昼に余る電気が多い家ほど、回収年数は短くなります。停電への備えを重く見るかどうかも判断の材料です。
太陽光と蓄電池は、元が取れないこともありますか?
あります。設置費用が高い、昼の余りが少ない、売る値段が高いといった条件では、保証の年数より回収年数が長くなることがあります。上の感度の表で確かめてください。
電気代が上がると、回収は早くなりますか?
買う値段が上がると、1年に得する額が増えます。買う値段が31円から37円になると、上の例では約8年が約6年になります。
容量が大きいほど、早く元が取れますか?
そうとは限りません。都の補助は容量に比例しますが、費用も増えます。昼に余る電気より大きい容量は、1年に得する額を増やしません。
区の補助があると、都の補助は減りますか?
都の補助は、税抜の対象経費から国や区の補助を引いた額が上限です。[2] 費用が十分にあれば都の額は変わりませんが、費用が小さいと都の額が減ることがあります。
あわせて読みたい
出典
- 令和7年度補正 家庭用蓄電システム導入支援事業 公募要領 1.1版(SII、2026年3月26日、PDF) p.9(目標価格12.5万円/kWh、設備費・工事費・据付費、税抜)。2026年10月24日確認
- 令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業(クール・ネット東京)/令和7年度事業の受付期間及び令和8年度事業の概要・今後の予定について(東京都環境局・東京都環境公社、2026年2月18日、PDF) p.1(契約締結前の事前申込)、別紙2(補助単価)。2026年10月24日確認
- よくある質問(全国家庭電気製品公正取引協議会) Q7 電力料金の目安単価31円/kWh(税込、2022年7月22日改定)。2026年10月24日確認
- 再エネ買取標準プラン(東京電力エナジーパートナー) 8.50円/kWh(税込)。単価は見直される場合あり。2026年10月24日確認
- 太陽光発電システム及び蓄電池設置費補助金(設置後申請)(足立区) 2026年10月24日確認
- 国のDR補助金の受付終了(2026年5月29日、予算到達。再開の予定なし)はSII 令和7年度補正 家庭用蓄電システム導入支援事業 お知らせ(2026年5月29日)による。2026年10月24日確認
- 2024年度 定置用蓄電システム普及拡大検討会の結果とりまとめ(経済産業省、三菱総合研究所作成、2025年3月7日、PDF) p.12(2023年度 設備費11.1万円/kWh・工事費1.0万円/kWh)、p.15(補助事業以外の価格水準、BCP用途)。2026年10月24日確認
- 買取価格・期間等(資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー) 住宅用(10kW未満)。2026年10月24日確認
- どうする?ソーラー よくあるご質問(資源エネルギー庁) 2026年10月24日確認
- オムロン マルチ蓄電プラットフォーム カタログ KAND-044Q(2023年8月、PDF) p.4(停電時の家電の目安)、p.22(保証年数・容量保証)。2026年10月24日確認
- 令和7年度以降の調達価格等に関する意見(案)(調達価格等算定委員会、2025年1月30日、PDF) p.18(住宅用のシステム費用 新築2024年設置 平均28.6万円/kW)、p.19 脚注(パワコン交換 約42.3万円)、p.19〜20(設備利用率13.7%、余剰売電比率70.0%)。2026年10月24日確認
- 停電時の自立運転について(シャープ 太陽光発電システム サポート) 2026年10月24日確認
- 令和7年度事業の受付期間及び令和8年度事業の概要・今後の予定について(東京都環境局・東京都環境公社、2026年2月18日、PDF) 家庭における太陽光発電導入促進事業(既存住宅 3.75kW超は12万円/kW)。2026年10月24日確認
更新履歴
- 2026年10月24日 感度の表、劣化を入れた計算、区の補助を加えた例、太陽光とセットの例、計算シートを追加
- 2026年10月24日 公開
次回確認予定:2026年11月24日